凱旋門賞2022 日本馬の考察

凱旋門賞2022 日本馬の考察 凱旋門賞
凱旋門賞2022 日本馬の考察
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2022年10月2日(日)日本時間23時5分発走予定の、フランス・パリロンシャン競馬場で開催される第101回凱旋門賞に出走予定の日本馬について考察していく。

最終予想、海外馬の考察、パリロンシャン競馬賞のコースガイドやレースの解説は別記事にまとめているので以下のリンクからどうぞ。

ステイフーリッシュ(牡7)

凱旋門賞2022 ステイフーリッシュ

ノーザンテーストは二度成長するという格言でお馴染みのステイゴールド産駒。ナカヤマフェスタやオルフェーヴルに続くことができるか。

日本におけるステイゴールド産駒の立ち位置としては、直線の短さや坂、馬場状態によって、ディープインパクト産駒に代表されるキレ味型の脚が削がれる場面や、他馬がスタミナを消耗したその先に活路を見出すような位置付け。インディチャンプのようにキレる脚を持つ馬もいるが、これはノーザンファーム式育成の影響が強く、社台式のステイフーリッシュはオールドスクールのタフなステイゴールド産駒。

海外の長距離重賞で2勝を挙げているようにタフなレースは歓迎の口ではあるが、凱旋門賞がそうであるかというと少々疑問。凱旋門賞はステイヤー決定戦ではないため、タフ一辺倒の馬がエントリーするレースではない。タフ一辺倒で勝てるなら、ガリレオ産駒がもっと勝てるはずという話である。

そのステイヤーと言って良いステイフーリッシュの活路は、他の日本勢と共にタイトルホルダーに対する番手集団を形成することにあると見る。タイトルホルダーとの力関係から前には行けるがハナを叩けるとは考えづらく、かといって後方一気のタイプでもない。とすれば、Cルメールの騎乗スタイルを鑑みても、ディープボンドをマークする形で3番手あたりを進めるのではないだろうか。

前哨戦のドーヴィル大賞で、地元フランスのボタニクがステイフーリッシュの番手で進めて直線でかわす競馬を展開したが、この競馬をタイトルホルダーに仕掛けることが想像しうる勝ちパターンと思われるが結果は如何に。

ディープボンド(牡5)

凱旋門賞2022 ディープボンド

父のキズナはディープインパクトに母父米国型という日本の超主流のクラシック血統だが、産駒に伝えるものは牡馬と牝馬で異なり、牡馬はパワー型、牝馬はキレ味型が出やすい。ディープボンドもキズナ牡駒のセオリー通りにパワー型。よって日本の芝を走る分には渋った阪神で連続好走したように、好走条件は高速馬場ではなく時計のかかる馬場に限定されてしまう。

昨年のフォワ賞での好走は、キズナから受け継いだパワーに加えて、リファールのクロスが効いたものと思われる。リファールはフランスの競走馬で種牡馬としてもフランスのリーディングを獲得している。また、3代父のダンシングブレーヴはリファールの代表産駒で86年の凱旋門賞で後方から末脚一気のレコード勝ちを収めている。つまり、フランスの馬場にフィットする裏付けのようなものは血統表からも見てとれる。

ここで少々目線を変えさせていただく。外国勢との横の比較はさておき、国内勢のタイトルホルダーとの勝負付けが済んでしまっているような気がする点は引っかかるが、それを補って余る興味の矛先が川田将雅への乗り替わり。

19年のキセキは、鞍上川田将雅で挑んでいたら日本勢初の凱旋門賞タイトルを手にしていたはずと、タラレバだが今でもそう信じている。なぜなら、馬場差こそあれど日本の逃げ馬が刻むテンの速さも、そういう馬が参戦している際の追走ペースも、控えめに言って世界トップレベルだからに他ならない。

欧州競馬はスローのヨーイドン。ロンシャンの場合、フォルスストレートでかかって終わらないように最後の直線まで折り合いに重きが置かれる。そんな中、当時のキセキの逃げを当時のパートナーの川田将雅とのコンビで凱旋門賞本番で披露していたら…。(別の話として今年はそれに勝るとも劣らないワクワクを抱いているのだが、それは後述させていただく。)実際、それに近いことを昨年のフォワ賞でディープボンド自身が証明しているので、今年は川田将雅がどういうエスコートをするのか非常に楽しみではある。

そして、ディープボンドがどういう位置で、どういうペースでレースを運ぶのか次第で、他の日本勢のレース展開にも関わってくる。タイトルホルダーの楽逃げを阻止するのか、ドウデュースへのキレ負けを避けにいくのか、あるいは、ステイフーリッシュの前をとるのか控えるのか。

タイトルホルダーが参戦している時点で後方待機はしないと思われるが、いずれにしても本番が楽しみであることに変わりはない。

ドウデュース(牡3)

凱旋門賞2022 ドウデュース

ハーツクライ産駒の第89代日本ダービー馬。

日本競馬界のレジェンド武豊と共に凱旋門賞タイトルの獲得という壮大な夢を描くオーナーは、馬主法人としてのキーファーズにとどまらず、親族を代表に据えたクラブ法人まで所有するという情熱家であるが、ゴドルフィンと対を成す世界的ブリーダーのクールモア、更にはクールモアと関係の深い世界のエイダン・オブライエン厩舎とも良好な関係を築いているという超人である。いや、これはもう尊敬の念を込めて超人ではなく愛人と呼ばせていただきたい。

さて、ドウデュースは先述の通りハーツクライ産駒ではあるが、ハーツクライ産駒には、距離延長が得意、古馬になってからギアが上がるといった特徴がある。

距離延長が得意というのは裏を返すと追走力の足りなさ。一般的に距離延長は追走ペースが緩む。よって、追走ペースの緩みやすい距離延長が得意という特徴が出る。

古馬になってからギアが上がるのもハーツクライ産駒の大きな特徴で、ジャスタウェイもリスグラシューも古馬になってからスケールアップしたように、これはハーツクライの母父トニービンの影響で古馬になって背腰が強くなるまでトモの緩さが抜けないからに他ならない。成長することでトモの緩さが解消してトニービンの特徴をより強く押し出すようになると言い換えることもできる。シュヴァルグランが古馬になってからジャパンカップを獲ったのもそういう事である。

これらのマイナスを埋め合わせるべく配合された馬の代表格が、20年皐月賞・日本ダービー2着のサリオス。そのサリオスが2歳戦から能力の高さを見せたのは仕上がりの早さに定評のあるダンチヒの影響。そしてダンチヒの直仔デインヒルの特徴は芝スプリント能力。サリオスはデインヒルの影響も強く受けているため、他のハーツクライ産駒に比べて追走力をカバーできていたという訳ではあるが、当時サリオスとコントレイルの2頭の能力が抜け過ぎていたという説は否定しきれない。

話をドウデュースに戻すが、ドウデュースはサリオスとは異なるベクトルで、ハーツクライ産駒のウイークポイントに対して米国的な速さを詰め込むことで補っているタイプの馬で、ダノンベルーガも同系。

この米国的な速さが凱旋門賞というレースの性質に対してどう出るかというのが争点だろうが、なまじ日本ダービーでレコードを叩き出している点が大いに気掛かり。ダービー馬の称号を得るということは日本競馬界の頂点を極めたということであると同時に、世界の超高速馬場の東京競馬場で最も速く走れる馬であることを証明したとも言える。これは流石に凱旋門賞のそれとは方向性が大きく異なると言わざるを得ない。

前走はあからさまな叩きであることから大して言及することがないが、本番での活路は、タイトルホルダーが逃げるペースと、番手グループを形成するであろう日本勢が刻む道中のペースだろう。ドウデュース以外の日本勢は前に行きたいタイプの馬なので、レジェンドはこのグループの最後尾を追走して脚を溜めると見ているが、番手グループのペースが速ければ速いほど、というか欧州のそれに対して相対的にペースが速ければ、そういうペースを経験したことのない欧州勢に対してアドバンテージを得てレースを展開することができる。

つまり、ドウデュースにとって他の日本勢が援軍にもなり得るといって良いだろう。

果たして、このアドバンテージを手に、オーナーとレジェンドに歓喜を届けることができるか。

タイトルホルダー(牡4)

凱旋門賞2022 タイトルホルダー

先に結論から言ってしまうと、今年はタイトルホルダーに最も重い印を回したい。

タイトルホルダーの父ドゥラメンテは、3歳時に凱旋門賞(または菊花賞)を視野に調整されている中で怪我を負ってしまった経緯がある。今回の挑戦は父の借りを返しに行く側面もあるが、牝系は父と凱旋門賞との縁を遥かに凌ぐレベルで歴代の凱旋門賞挑戦の日本馬と非常に縁が深い。

母の父モチベーターは、13年凱旋門賞でオルフェーヴルを5馬身突き放したトレヴの父である。さらに、モチベーターの父は99年の凱旋門賞でエルコンドルパサーを差し切ったモンジュー。これはもう縁というより、もはや因縁と言った方が正しいかもしれない。

他の日本勢の考察で散々ペースについて触れてきたが、ペースの話はタイトルホルダー抜きには語ることができない。何はさて置き、タイトルホルダーが逃げて自分のペースを刻むことが全ての起点であり大前提の条件。鞍上の横山和生が直前の300勝達成記念インタビューで「タイトルホルダーと共にリズムよく走ってくる」と語ったように、タイトルホルダーのリズム、つまりは、マイペースの逃げを展開する腹積りであろうことは想像に難しくない。人馬ともにこれが実現可能かどうかだけが焦点で、日本馬のマイペース逃げが欧州馬にとっての戸惑いを産むことは、昨年のフォワ賞でディープボンドが立証済み。そして、その逃げのペースは、イレギュラーなことが起こらない限りタイトルホルダーの方が上であり、ここに対欧州馬観点で複合的なアドバンテージがあると見ている。

まず、そもそも論としてタイトルホルダー自身のペースそのものがアドバンテージで、そして、他の日本勢の脚質を鑑みると番手集団は日本勢が形成する見込みが高く、図らずも欧州勢との間に壁が形成されるであろうことから、欧州勢に的にされるリスクが低い。さらに、その逃げペースを欧州勢が目の当たりにしていないというのも大きい。昨年のディープボンドは直前の乗り替わりというアクシデントもあったにせよ、前哨戦で手の内を見せてしまった部分は否めない。対してタイトルホルダーは良くも悪くも前哨戦を介していない。これらのアドバンテージはぜひ積極的に活用していただきたい。

ちなみに、昨年のクロノジェネシスがぶっつけで…という反論もあるかもしれないが、彼女の場合はタフなレース展開でも堅実に末脚が使えて、そしてそれはあくまでも対日本馬に対してのアドバンテージであって、同系かさらに上がいる欧州競馬では目に見えたアドバンテージにはならず、そもそもタイトルホルダーとは脚質がまるで違う。なので、彼女の場合はぶっつけがどうこうという論点ではなく、他馬との力関係や馬場に敗因を求める方が正しいと見ている。

そして最後に、タイトルホルダーに対して最も期待を寄せている部分について言及しておくが、それは、強い逃げ馬が挑むという事。これは、これまで挑戦した日本馬とは一線を画しているからというのもあるが、欧州競馬には逃げて勝つという発想が根底からない。ラビットと呼ばれるペースメーカーを置きつつスローでレースを組み立てたうえでの戦いが欧州競馬のスタンダード。つまり、前に行く馬はかませ犬なので、前に行く強い馬がるレースなんて無いに等しいく、逃げ馬が勝ち負けできないという議論自体が成立しないが、タイトルホルダーをファイトさせるラビットを放り込まれた時が厄介ではある。ただし、先述した通り他の日本勢が壁になると見ているため、このリスクも低いと言っていいだろう。

菊花賞に次ぐ亡き父の忘れ物。
日本勢初の栄冠を。

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