ダート競走の立ち位置
中央競馬におけるダート競走は、GⅠグレードの競走は僅か2レースしかなく、芝のレースのそれに比べて圧倒的に番組が少ない。
そのため、賞金獲得の観点からも、最初からダートの頂点を目指して生産配合されるケースは決して多くはない。
ダービーを中心とした芝のレースがメインの日本競馬、特に中央競馬の構造上、
芝のレースでの
- スピードの絶対値が足りない
- 芝の時計勝負に対応できない
- 直線でのキレ味が足りない
- パワー型に寄り過ぎている
- 成長が間に合っていない
- 背腰がしっかりしていない
- 馬体がゆるい
- 良化待ちの叩き
といった様々な理由から「ダートを試す」というケースが散見される。これが、本来なら芝のレースに高い適正を示すサンデー系や欧州型が、なくなくダート競走を試されるという図式の正体である。もちろん、ダート適性の高いサンデー系や米国型のようにハナからダートというケースも一定数存在する。
ルーツ毎の大まかな分類
サンデー系(日本型)
サンデー系は、ゴールドアリュール系やネオユニヴァース系などの一部を除き、もはや日本の芝レースにおいて発展した血脈とも言えるため、ダートへの適正は本来的には決して高くない。また、本来は軽い芝でこそ能力を発揮しやすい適正を持ち合わせているのがサンデー系である。
そのため、
- 砂を被ると怯む
- 特に内枠は砂を被るリスクが高い
という点は覚えておきたい。
なお、ダート競走では雨絡みで軽い馬場になるとスピード適正が要求されるため、元来軽い馬場で能力を発揮しやすいサンデー系は、
- 稍重以上での期待値が上がる
- 特に近走での芝経験はアドバンテージ
という点も抑えておきたい。
欧州型
欧州型は、ご先祖代々芝のレースのしか走っていないため、ダート競争への適正は絶望的に持ち合わせていない。ただし、パワーや馬力は豊富に持ち合わせている事が多い。
何はさておき、
- サンデー系以上に砂を被ると厳しい
という点には注意したい。
一方で、砂を被らない、または砂を被っても怯まない前提で、
- パサパサのダートでのパワー勝負
という条件には対応できる場合がある。
例えば、冬の中山の乾いたダートの外枠で激走するというパターンが最たる例である。
ただし、欧州型は本来的にはダート適正が低いため、父も母父も欧州型ではなく、父米国型で母父欧州型という具合に、生粋の欧州型では無い方が期待値が上がる。
なお、欧州型は芝でのスピード勝負に対応しきれずにダートを使われることも多いので、足抜きの良いダートでのスピード勝負にはサンデー系に比べて分が悪く期待値も低い。
米国型
ややこしいのは米国型で、米国のダート競走は踏み固められた乾いた土の上で開催されるため、日本の「砂」の上で実施されるダート競走とはレースそのもの性質が全く異なる。言ってしまえば米国のそれはダート競走だが、日本のそれはサンド競走である。そのため、砂を被る適正がなく、揉まれ弱かったり、砂を被ってやる気をなくす馬が少なからず存在する。そういう馬も一定数いるということは頭の隅に置いておきたい。
米国型は、
- ダート血統として適正を見出されている
または、芝を使ってみたものの
- 芝の時計勝負に対応できない
というケースでのダート出走が多い。
ダート競走は、本来ならばダートの本場である米国にルーツのある馬達の独壇場になりそうなものである。
だがしかし、実際のレース結果にはそこまでの偏りはない。確かに米国型はダート戦に強いが、サンデー系のスピードに屈する場面もあれば、欧州型のパワーに押し切られる場面もある。
これは、日本のダート競走が砂の上で実施されている事に由来する。
人間でもそうだが、砂浜を走ると足を取られてひたすら走りにくい。土のグラウンドを走るのとでは明らかに勝手が違う。ここにサンデー系や欧州型の活路が見出されるのである。
細かい話をすると、
- 距離延長が得意な産駒
- 距離短縮が得意な産駒
- オールダートが得意な産駒
- 芝スタートが得意な産駒
- 乾いた馬場が得意なパワー型
などなど、バリエーションは豊富にあるが、
まずは、
- 日本のダート競走の構造
- 各馬のダート競走参戦の経緯
- 各馬のルーツによるダート適性
この辺りに着目する事で、ダート競争の見え方が随分と変わってくるはずである。
芝のレースに関する言及は、こちらのページ(血統から競馬を考える)からどうぞ。