日本競馬とサンデーサイレンス

日本競馬とサンデーサイレンス 中央競馬
日本競馬とサンデーサイレンス
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大種牡馬サンデーサイレンス

サンデーサイレンスは、米国クラシック2冠を含むGⅠで6勝を挙げたのち、引退後に日本の社台スタリオンステーションで種牡馬入りし、1995年から13年連続でリーディングサイアーを獲得し日本競馬の血統図を書き換えた。(トップ画像はJRA-VAN Ver.Worldさんから引用)

サンデーサイレンス躍進の背景としては、サンデーサイレンスがノーザンダンサーもミスタープロスペクターも持たず、当時の繁殖牝馬との配合の自由度が高かった事が挙げられる。

加えて、日本の競馬場が他国のそれと比べて時計の出やすい芝コースが主流であること、走破タイムが破格に速いこと、或いは、道中を溜めて終いを伸ばす競馬が主流になった事なども末脚型の馬を出しやすいサンデーサイレンス系の躍進に一役買ったとも言える。

世界の競馬と日本の競馬

ここで少々視点を変えて、欧州・米国・日本、世界の競馬についても触れてみたい。

欧州競馬は、貴族の遊びから発展したもの。自然の地形を活かした起伏の大きなコースで開催される。例えば、英ダービー開催コースのエプソム競馬場はもはや山。日本の競馬場とは比べ物にならないレベルのまごう事なき山。山肌に芝を養生して馬を走らせていると言っても過言ではない。また、欧州各地の粘土質の路盤は雨が多い事も相まって日本の路盤に比べて圧倒的に緩い。起伏が激しく緩い路盤で勝ち抜くことを求められる欧州競馬では、タフな馬場でスピードを落とさずにゴール板を駆け抜けるために磨かれ淘汰されてきた馬力に富んだ血統を育み続けている。なお、叩いて良化するのが欧州馬で世界最高峰レースの凱旋門賞もステップレースを叩いてから参戦するのが通例である。欧州ルーツの馬の日本競馬での馬券の買い方のポイントには、タフなレースかどうか、叩いて良化が見込めるかどうか、といった点が挙げられる。

米国競馬は、エンターテイメント大国で大衆娯楽の興業として発展したもの。貴族ではなく馬券購入者ありきのため、土地さえあればどこにでも作ることのできるダートコースが主流として根付いている。そのため米3冠競争もダートコースで開催される。米国では3冠競走以外にも2歳時から賞金獲得可能な番組が多数組まれているため、仕上がりの早さが重宝される。いわゆる小回り平坦の米国競馬では、スタート直後にトップスピードに乗せる加速力や、そのスピードをゴールまで維持する速力のある血統を育み続けている。なお、ダート=砂ではなく、踏み固められた渇いた土である。ゆえに、サンデーサイレンスなどの米国から輸入された種牡馬の産駒たちは日本の硬い路盤の高速馬場に高い適正を示す事が多い。米国ルーツの馬の日本競馬での馬券の買い方のポイントは、仕上がりの早さを活かした新馬戦や3歳戦、軽い馬場で淡々とスピードを維持できるかどうかといった点などが挙げられる。

最後に、日本競馬は日本ダービーを頂点にしたピラミッドの中で展開されている。誤解を恐れずにいうと、東京芝2400を誰よりも速く走れる馬が日本競馬の王道である。日本競馬はダービー戴冠に向けて欧州や米国から輸入された種牡馬や繁殖牝馬との配合や生産を繰り返しながら発展してきたもの。つまり、日本ダービーを含む3冠競走の舞台で速く走れる血統が主流であり、それらの血統を育み続けているのが日本競馬と言える。近代日本競馬では主流のサンデーサイレンス系に欧州や米国ルーツの種牡馬や繁殖牝馬との組み合わせで競走馬が生産されているため、それぞれのルーツから特性を紐解く事が馬券のポイントである。

日本競馬とサンデーサイレンス

まず、先にも触れたが、ダービーを勝つために競走馬を生産しているのが日本競馬である事は再度前置きしておく。

90年台半ばのサンデーサイレンスの台頭により様相が一変したが、それ以前はノーザンダンサーの直仔であるノーザンテーストが日本競馬界を席巻していた。ノーザンテーストは非常にタフな血統で、バテない底力の源流とでも呼ぶべきもの。サンデーサイレンスに時代が移った後も母の父として影響を残し続け、メジロ牝系や3冠馬オルフェーヴルはその代表例である。

話をサンデーサイレンスに戻すと、サンデーサイレンスが日本で大成功を収めた要因は数多あれど、主な要因は日本の高速馬場に高い適正を示したからに他ならない。

欧州のような緩い路盤では減速しない馬力が要求されたり、米国のような渇いた土の上ではトップスピードに乗せる早さとそれを維持する能力が要求されるように、欧・米どちらとも異なる直線が広くて長い日本の高速馬場では高速巡回性能と終いの瞬発力が要求される。この点がピタリとハマって瞬く間に時代を築き上げたのがサンデーサイレンスである。

サンデーサイレンスの直仔たちの現役時代の活躍ぶりも目覚ましいものがあったが、ステイゴールド・フジキセキ・ゴールドアリュール・ハーツクライ・ディープインパクトなどなど、数え上げればキリのない個性豊かな後継種牡馬たちの活躍ぶりにも目を見張るものがある。

まさにこれがサンデーサイレンスの凄みで、現役時代にライバル関係にあった直仔達が種牡馬や繁殖牝馬に上がっても、直仔の代から現在に至るまで20年以上もそっくりそのままリーディングを争っている。

近10年の日本ダービー馬でサンデーサイレンスの影響を受けない馬はレイデオロのわずか1頭のみ。

近20年に広げてみても、エイシンフラッシュ、ウオッカ、キングカメハメハ、タニノギムレット、ジャングルポケットと数える程度である。

ダービーで勝つため、東京競馬場で誰よりも速く駆け抜けるために日本で紡がれた血統。これがサンデーサイレンスの血脈であり、サンデーサイレンス天下の正体である。

なお、サンデーサイレンス系全ての馬が、東京競馬場での究極の上がり勝負に強い訳ではなく、飽和レベルでサンデーサイレンス系が繁栄していることもあり、それぞれに異なる個性や特性を持ち合わせている。これはまた別の機会に。

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